夫との離婚後、妻が婚姻中に夫以外の男性との間にもうけた子どもへの監護費用の分担を求めることは、次の a 〜 c の判示の事情のもとでは、権利の濫用に当たるとされました。
- 妻が、出産後程なく子と夫との間に自然的血縁関係がないことを知ったのに、そのことを夫に告げなかったため、夫が親子関係を否定する法的手段を失った。
- 婚姻中、夫は、相当に高額な生活費を妻に交付するなどして、子の養育・監護のための費用を十分に分担してきた。
- 離婚後の、子の監護費用について、専ら妻において分担することができないような事情はうかがわれない。
子ども手当の支給について、それが単年度限りの法律に基づくものであること、支給の趣旨・要件などを踏まえると、子ども手当は子の養育費の算定にあたって考慮すべきではないとされました。
- 平成22年度における子ども手当の支給に関する法律は、次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援するために、平成22年度における子ども手当の支給をする趣旨で制定された同年度限りの法律であり、政府は平成23年度以降は検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされている。
- 支給要件として、監護者である父又は母の所得に関する制限が設けられおらず、子ども手当は、子育てを未来への投資として、個人や家族の問題とするのではなく、社会全体で応援するという観点から実施するものであると説明されている
子ども手当の支給は、民法上の扶養義務に淵源を有する養育費の支払に影響を与えるものではないと解される。
下記の事情の下で、婚姻外の男女の関係を男性が突然かつ一方的に解消したとしても、慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできないとされました。
- 男女の関係が継続していた期間中、共同生活をしこたことはなく、それぞれが自己の生計を維持管理しており、共有する財産もない。
- 女性は、男性との間に2人の子を出産したが、子の養育の負担を免れたいとの女性の要望に基づく両者の事前の取り決め等に従い、2人の子の養育には一切かかわりを持たず、また、出産の際には、男性側から出産費用等として相当額の金員をその都度受領している。
- 両者の間に民法所定の婚姻をする旨の意思の合致が存したことはなく、かえって両者は意図的に婚姻を回避していること。
- 両者の間において、その一方が相手方に無断で相手方以外の者と婚姻をするなどしてその関係から離脱してはならない旨の関係存続に関する合意がされた形跡は無いこと。
婚姻の両当事者は、夫婦間のさまざまな問題を克服すべく、お互いが成熟した対等な存在であることを尊重し、十分な話し合いを尽くしたうえで、お互いの考え方や立場を尊重した妥協点を探り、譲歩すべき点は譲歩するといった寛容さを見せながら、両者の考え方の溝を地道に埋めてゆき、さらなる信頼関係の熟成に努めていかなければならない。
婚姻生活における夫婦間の話し合いは、婚姻生活の中核部分をなすものであり、婚姻生活の基本的プログラムといえるものであって、衝突を伴っても話し合いを繰り返し、婚姻生活の課題を乗り越えながら家族の絆を深めていくという過程を婚姻は当然に予想しているものといえる。
- 夫婦間の話し合いが不十分であったことが原因で婚姻関係がこじれてしまった。
- 婚姻後約4カ月(同居後約3カ月)で別居に至っている。
- 両者ともに、今後新たな夫婦関係を築いていくとの意欲や展望がうかがわれない。
- 両者の性格、物の考え方、見方の違い。
離婚請求を棄却して、婚姻関係の維持を強制するよりも、離婚請求を認容し、金銭的に精算すべきものがあれば精算をし、双方に新たな出発の機会を与える方が、お互いの将来にとって利益であると考えられとされ、離婚請求が認容されました。